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富士フイルムヘルスケアの Cardio StillShot、幅広い心拍数への精密な心臓画像診断を可能に(心臓 CT 画像再構成の時間分解能を 6 倍に向上)

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心臓のCT撮影では、心臓とその血管系の鮮明な診断用画像を得るのは簡単ではありません。心臓は絶えず動いているため、その画像が不鮮明になる可能性があるからです。心拍数が1分間に75回を超える場合や、不整脈などで心拍が不安定な場合は、ブレのない鮮明な画像を得ることは非常に困難です。画像診断の世界的なリーダーである富士フイルムヘルスケアは、NVIDIA GPU を使用して、新たにCardio StillShot というソフトウェアを開発しました。同社の全身用X線CT診断装置である SCENARIA View と組み合わせることで、幅広い心拍数において詳細な心臓画像診断を可能にします。これは革新的な手法であり、高速回転スキャナーを購入する必要なく、ソフトウェアによって画像診断を向上させることが可能になります。Cardio StillShot は、従来の画像再構成の手法に比べて6倍の時間分解能向上を実現しており、心臓の動きを検知、補正することにより画像のブレを防止します。これによって、鮮明な心臓CT画像が得られるようになり、冠動脈や大動脈弁、心筋といった構造を非侵襲的に可視化できます。臨床チームは心不全や心筋症、構想的異常といった心臓の疾患をより正しく診断できるようになります。

心血管疾患の発生率と非侵襲的な診断ツール

心血管疾患 (CVD) は世界的に主要な死因となっており、WHO によれば、2019 年には 1,790 万人が CVD により死亡したと推測されています。これは全世界の死亡者数の 32% に相当します。これらの死亡のうち、 85% は心臓発作と脳卒中によるものでした。

患者の心血管疾患リスクをできるだけ早く評価し、さらなる悪化を防ぐための非侵襲性のツールとして、冠動脈 CT 血管造影法 (CCTA) での画像診断手法が広く使用されています。CCTA により、心臓に酸素と栄養を送り込む冠状動脈内に付着するプラーク (冠動脈粥腫) を見つけることが可能になります。プラークは動脈内に脂肪、コレステロールおよび他の物質が蓄積したもので、心臓への血流を阻害します。プラークの蓄積を早期に見つけられれば、心臓発作の予防につながります。心電図同期を用いた心臓 CT では、心臓の動きが少ない心拍位相や、複数心位相のデータを使用した画像再構成を行うことで静止した冠動脈の画像を作成することができます。

SCENARIA View。Cardio StillShot は、富士フイルムヘルスケアによる SCENARIA View の最新モデルのソフトウェア利用オプションとして、RTX A6000 GPU コンソールと併せて提供される予定です。SCENARIA View は現在、日本で販売されているほか、全世界で展開される予定となっています。

心拍数が高い被験者の画像診断の困難さ

心拍数が高い、あるいは心拍が不安定な患者であっても、心臓CT検査を行う必要がある場合があります。残念ながら、このような状態にある患者の鮮明な診断画像を撮影するのは64列CT装置では困難です。心拍数が 1 分間に 60 回(BPM) 程度であれば、心拍の合間に画像を撮影する時間的な余裕があります。しかし、心拍数が 75 BPM を越えると、画像撮影のための時間が足りず、不鮮明な画像が生じやすくなります。冠状動脈の詳細な画像を撮るには、より高い時間分解能が必要になります。

Cardio StillShot は、患者の心拍数が高いときでも、心拍数を低下させるためのベータブロッカーや他の薬品を使用せずに、心臓の動きを検出・補正することで、高い時間分解能を実現するために開発されました。

CPU から GPU への移行で実現したCardio StillShot

Cardio StillShot 画像再構成ソフトウェアは、従来からあった時間分解能の問題を解決するものです。開発当初、富士フイルムヘルスケアは CPU を使用して画像再構成とブレの除去を行っていました。しかし、1枚の画像に必要な計算量が従来の10倍に増加したため CPUによる画像再構成は Cardio StillShot にとって有効な選択ではなくなっていました。富士フイルムヘルスケアでは、Cardio StillShot を開発するため、NVIDIA GPU と NVIDIA ソフトウェアへの移行を行いました。77 TFLOPS の処理能力を持つ NVIDIA RTX A6000 GPU の導入により、動きベクトルフィールド (MVF) の計算が高速化され、臨床に使用できる画像再構成時間でブレを除去した鮮明な画像を得られるようになりました。同社は、ピクセルレベルで動きを推定する NVIDIA Optical Flow SDK、計算を高速化する CUDA、および性能を最適化する、NVIDIA Nsight Compute といった、NVIDIA のソフトウェアスタックとツールも採用しました。

4D の動きベクトル フィールドを活用し、画像の精度を向上

富士フイルムヘルスケアはCCTA での動きを推測するために、4Dの動きベクトル フィールド (4D MVF) を使用しました。MVF は、心臓の動きを自動的に検知および補正することで、より鮮明な画像を生み出すアプローチです。これにより、従来の標準的な再構成手法では 175 ミリ秒 であった時間分解能が、Cardio StillShot ソフトウェアを使った場合には 28 ミリ秒 に短縮され、 6.25 倍向上しています。NVIDIA GPU により、心臓の鮮明な画像をわずか 30 秒で再構成することが可能になったのです。

CTスキャン画像より生成される、4Dの運動ベクトル フィールドのしくみ

アクセラレーテッド コンピューティングにより、既存のスキャナーに先進の機能を追加

富士フイルムヘルスケアでは、アクセラレ―テッド コンピューティングによってシステムの性能と、CT 設計の費用の転換を行いました。通常、高性能な機能を実現するには、高額な設計費と製造のアップグレードが必要となります。同社はNVIDIA の GPU によってこの常識を打破し、ソフトウェアの強化を通じてスキャナーに重要な機能を追加しました。Cardio StillShot の画像再構築ソフトウェアに GPU アクセラレーションを追加することで、既存の CT スキャナーの心臓画像品質が向上し、時間分解能が 6 倍以上になりました。

Cardio Stillshot ソフトウェアは、富士フイルムヘルスケアの SCENARIA View の最新モデルに搭載されます。このシステムは日本で販売を開始しており、全世界でも展開される予定です。富士フイルムヘルスケアは、 4月15日からパシフィコ横浜で開催される2022 国際医用画像総合展(ITEM)において、Cardio StillShot ソフトウェアと SCENARIA Viewの展示を行う予定です。詳細は、こちらをご覧ください。

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